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【ヨルとイオ】
pieces of the puzzle
東京タワーがキービジュアルの一つになるという、恋愛ドラマの話が来ました。 「ねぇこれ、台本読んだけど、『愛してる』ってセリフ、比較的厳しい状況で言わなきゃならないの」 「あー、そうね。でもまぁ恋愛ものだしねぇ」 「この言葉は、本当に愛してる相手にしか言いたくない」 「は?」 「人生で最初の『愛してる』をセリフとしては言いたくない」 「なるほど、それはそうかもしれない。同情に値する。なら、言葉としては言わないように変更してもらえるか、本当にできるかは分からないけど、とりあえずヨルの気持ちも話して、お願いしてみる?」 「いいよ、恥ずかしい笑。イオさんにだから言えるわがままなの」 「なんだ、そっか」 「また大真面目に受け取ってからに」 「マネージャーの仕事でしょそれが」 「それでね、どうしたら気が済むか考えたの」 「うん」 「では聞いてください」 ヨルはそう言ってから一呼吸置くと、 「『愛してる』」 と真面目な顔で言いました。 「え?」 と声もなく疑問符を浮かべるイオに、ヨルはニマッと笑うと、 「これでもう、セリフとして言えるようになった!サンキュー」 と言って、ジャンパーをひるがえして機嫌良く去っていきました。 その背中を、イオは呆然と眺めていました。 これがヨルとイオの、小さな小さな、そしてとても静かな、約束の始まりでした。 |
nobodyが、
あのマークでLINEスタンプ作って?
と言ったので、
諸々描いて申請してみました。
あーこんなこと、
してよかったんだな。
夜は大事なことを
いろいろ二人で話していましたが、
nobodyのところでは、
なんか素敵なことが
決まっていっているようです。
お互いに、
自信がない、
愛を相手に対してだけ
維持できる自信、
関係を維持できる自信。
いろいろ話しても、
二人ともやっぱり、
別々の感覚で不安。
それで、ふと気づいたカードデッキを、
「二人のことで引いていい?」
って引いてみたら、
パサっと3枚。
(HEATHER ROAN ROBBINS/LUCAS LUA "DE SOUZA"/JMA・アソシエイツ/2021)
「自信がなくても愛がなくなっても、
お互いの気持ちがたとえ
死んでしまっても、大丈夫。
二人の関係性の持続だけを
変わらぬものとして
見ていなさい。」
え?自信も愛も?
なくて大丈夫なの?
それでも二人でいることは
変わらないの?
離れなくていいの?
あまりのことに、
沈黙したあと、
二人で笑ってしまうのでした。
ちなみに。
魂の歴史において、
唯一にして初の反抗期です。
繰り返します。反抗期です。
頑張っています。
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【ヨルとイオ】
pieces of the puzzle
「こりゃまた今日はエライコッチャな格好してるわね」
「は?」 「え?」 「いいでしょ!全身裏原宿」 「そんな個性的な服、上から下まで着てどうすんのよ」 「着てるとみんなかっこいいって言うし、欲しがる人もいたらあげるし。あげるときのためにお店の袋も持ってるよ?」 「移動洋服屋かあんたは」 「あんたって呼ぶってことは、イオさん今日機嫌悪いの?」 「え?」 「生理?」 「うるさい」 「ビンゴ。大事にしてね?」 ヨルはそう言うと、こぶしでグーを出してきました。そこにイオもグーで合わせて応える、それがだいたいの、イオからの「ありがとう」だったりしました。 「どっか一点だけにしてみたら?」 とイオはグーを出したままで言いました。 「うん?」 「裏原宿。体型問わないけど着こなし難しそうなやつに見えるから。一度出かけると、いろんなお店の人に着てって言われるのかもしれないけどさ。かえって服に載せられてるテンションがぶつかってもったいないんじゃ?」 「それぞれの服の?」 「うん」 「そっか、そうかも。それぞれ別のデザイナーさんなんだしね」 「頼まれるのは分かるけども」 「好きなテイストの服を一応丁寧に選んでるから、一種の橋渡し役みたいなつもりでもいたの。ヨルさんが着てるのほしいって言ってくれる子たちもいるし」 「それ、ほんとにその服をほしがってるの?ヨルのものだからほしがってくれてるだけじゃないの?」 「あ、そっか。それじゃ服に悪いね?」 「私はそう思うけど」 「そっか、じゃ、ただやたらに着てるだけじゃない方がいいんだね。かっこよく着られるようになった方が、きっとちゃんと服の方を見てもらえるし、ブティックの人たちの宣伝になるもんね?」 「うんうん。これからの日本のファッション界を担うかもしれない、結構大事な潮流なんだから」 「なんだ、イオさん、こういうの興味ないのかと思ってた。さすが原宿育ち?笑」 「からかうな」 「ごめん、生理だった」 「あの人たち、私みたいな地味で優等生っぽく見える輩は嫌いだろうから近づかなかっただけ」 「今度一緒に行こうよ」 「いいよ」 「行こうよ。あなたが何言うのか聞きたいの」 |
昨日のnobodyについて、声で話したこと。
nobodyは私の「男性性」だった?
聴きやすい音質のものを置いておきます。(20250524)
(聴覚難にまつわるご都合以外での文字化はご遠慮ください)
nobodyっていう名前が
いったいなんで
この名前なのか、
実は長いこと、
よく分からなかった。
地区のミムラ
(私の病時の分身的存在)
のところに現れた、
多分、とても大切な、
でも、
ある意味、
だからこそ、
他者というものの
本質と言われる、
「根源的な暴力」であると
いうことも、
そのお話の中では、
どうしようも
なかったようだった。
彼に頼まれて
顔を作ってあげてて、
「混沌は(七つ)
穴を空けたら、
死んでしまうのです」
その顔が現れる瞬間に
死んでしまった人。
*
あれから25年。
ごく最近、
ずっと頭の中で
話してきていた
ある人が、
現実に存在する人で、
しかも、
あの
nobodyだと
分かって、
それはそれは驚いた。
(え?
なんで分からなかったの?)
その過去生を、
もしくは、
パラレルワールドを、
彼に勧められた設定で
物語に書くなかで、
ようやくようやく
二人の間に
何があったか
思い出したら、
nobodyは、
本来の英語の
「誰でもない人」
という意味ではなく、
どちらかというと、
妄想のその人、
身体の、
ない人。
no body
だった。
*
その物語では、
仕事上の理由で、
否定的な関係
としてではなく、
むしろ
愛ある関係だった
からこそ、
彼と離れたあと、
彼の知らないところで
(離れてから知った)
彼のしるしのように
授かった子どもを
死産してしまい、
その事象への解釈を
一人で壮絶に厳しく
難しくしてしまって、
「ここんとこが
あなたらしい」
とnobodyは言う。
(ほんとにね。)
彼の身体のあるところには、
もう決して
行ってはいけない、
という感覚が、
根強くできて
しまったらしい。
だから、
私が会えるのは、
想像の中の人、
身体のない人、
no body。
*
彼を
(現実においては)
認知しない、
認識しない、
そんな呪いが、
今世は
かかっていたのかも
しれない。
出会ってしまったら、
必ず好きになるから。
一瞬見た背中でも、
すでに手遅れ
というところが
なかなかすごい。
*
その呪いは、
もう、
(あの
出会いのときにも、
そして
長い長い
断絶のあとの
病明けからも、
いつの間にか
続いてきた)
(彼はずっと、
私の身体のある場所を
認知していたのだ。
30歳の私が出会う、
ずっと前、
彼が小さな頃の
とある緊急時から、
ずっと)
(ありがとう)
(ちなみに私は
絶賛受験勉強中
だった)
(どうりで、
一日連続10時間とか、
一人ではなしえない
集中力が発揮できていた
わけだ!)
「面白かったから
ずっと見てた」
五次元であれ、
彼に再会したことで、
(氷山が溶けるかのように)
解けてきている。
それでも、
身体に回りきった
毒のように、
そう簡単には
問屋が卸さない、
状態なのだろうか。
*
ここまで
過去生の清算を
続けてきて、
いちばん
意外なことに、
悲しい、
という
想いに入るのが
難しい。
苦しいとか、
つらい、
痛い、
とかなら、
魂の古いときのものも、
感じられるように
なったのだけれど。
もし本気で
悲しい、
と思ってしまったら、
その方が
死んでしまいそうだ。
その方が、
死んでしまいそう。
*
何が、
あるいは、
どんな解法なら、
この自分を、
悲しみを、
和らげられるんだろう。
「悲しい」
という表現方法で、
ヒトは何を
手放せるんだろう?
(そうでなければ
そんなものは
そんなふうには
現れてこないから)
(五行の思想では
「悲しい」という
感情は、
肺に通じているらしい)
(病時に
書き手である私から
地区の物語に
吐き出された
分身のミムラは、
あの緊急時に
耐えるためだろう、
感情を持っていなかった。
感情のない、
無邪気な子どもの
ようだった)
*
nobody、
その言葉に込められた
無意識の意味を
今頃知って、
割と
呆然としている。
*
この悲しみを生んだ
設定と展開は、
お話なんだけれども、
つくりごとには
思えないので、
どこかの過去生、
パラレルのまんま
だとすれば、
彼との思い出が、
あまりにも
幸福だったんだろう。
そこから
反転した不幸に、
二度と彼が
いることのない時間に、
耐えることが
できなかった。
多分、
それ以上でも、
それ以下でも
ない、
ような気がしている。
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【ヨルとイオ】
pieces of the puzzle
ヨルは、アイドルの本業以外にも、俳優としてだんだん認められるようになってきました。イオの目から見ると、割とヨルの経歴や性格にとっては挑戦状を叩きつけられるような役が多かったのですが、ヨルは「僕、まだ若いしね」と言って、それに応じつづけたのが、功を奏してきたようでした。
これらのやってくる役には、事務所の力もしくはさらに別の力が働いてきているのか、マネージャーとしてのイオが何かをさしはさむことは、連載のときとは違って、一切許されませんでした。 そんなヨルの努力が実った、ある映画作品で、ヨルは初めて俳優として大きな賞を受けることになりました。ヨルはもう、大喜びで、イオのところに報告にやってくるなり、小学生の運動会で踊るやつみたいな、フォークダンスの歌を歌詞なしでふんふん歌い出すと、「はい!」と言って、そういうのが全く踊れないイオの手を取って、楽しそうに踊り出し、そのご機嫌さがうかがいしれました。 なぜかこうした情報が回るのが、マネージャーのイオより、ヨルの方が早いことに、若干の疑問を持ちながらも、「よかったね、頑張った甲斐あったね」とイオは、フォークダンスの最後のお辞儀だけはちゃんとして、「おめでとう」と言いました。 けれど、それが公式に発表されるのとほぼ同時に、ヨルはその受賞を辞退しなければならなくなりました。それは完全に事務所の意向で、事務所の他のメンバーとの兼ね合いからとのことで、ヨルのショックたるや、その話を聞かされたすぐ前に食べていたものを、すべて吐き戻してしまうくらいでした。 この話すら、イオよりもヨルに先に通じており、その件も含めて、マネージャーとしての彼の健康維持のためにも、ヨルに強烈な話が自分より先に届くのを制限してほしいと、イオはイオを雇ってくれた上司に、直談判に行きました。 「どうやらここら辺からは、アイドルだけの世界とは違って、日本にとってのあらゆる制限の理由になりえているルール、つまり年功序列の波がやってくるようなのです」 と上司は、緊張した面持ちで話してくれました。 「アイドルや歌い手というのは、基本、頑張ったらご褒美がある世界です。なぜなら、そのことが、応援してくださる方々を喜ばせることになり、その達成によってその方々のこともアイドル側から応援することができるからです。でも、演技の世界、俳優業では、確かに違うわね?アイドルはいつも自分の役をやっていますが、台本のある作品の世界では、別の役であることが大半です。そして台本の役は常に、作り手の方々の側からいただくものですね?両方とも、たとえ演じているのだとしても、大きく違うのだということ。今回のことは、自身の人気を商売とする二つの業界の、衝突とも軋轢とも、言えることなのかもしれません。だから、我慢しましょう?ヨルのために。彼の未来のために」 イオは、淡々とした上司の言葉を聞いている間に、泣き出してしまい、その後は嗚咽をこらえるので精一杯でした。イオは、学生時代に小劇場の演劇を、その場で配られるチラシを頼りに梯子するのが大好きだった時期もあり、「演じる」ということについての彼女の言うことは、よく分かりました。でも、やはり納得がいかなかったから。 上司の部屋を出て、廊下のひんやりした空気に触られたら、泣きつかれていることに気づいて、イオは、さてどうしたもんか、と思いました。泣いた顔でヨルに会ってもしょうがないし。悲しいのは自分じゃなくて、ヨルの方です。そこでふとした思いつきを、決行することにしました。 数時間後、ヨルの本業の方の現場が終わるのを見計らって、イオは普段はそういうことはしたことがなかったのですが、ヨルを訪ねていきました。 ヨルは、イオを見つけると、「わ!どうしたの?」と言いましたが、イオが手に持っているものを見て、しばし絶句したままでいました。 「はい!」イオはつかつかと歩み寄ると、持っていた凄まじく大きな花束を、ヨルに突き出しました。それは、今回辞退しなければならなかった賞と関連のある色、花としては少し珍しい色の花を、ふんだんに使ったものでした。 「で、でかいねこれ」「10万つぎ込んだもん」「え?10万?10万って言った?10万円?」「だって。その色珍しくて、一本ずつが高いんだもん」「イオさん、そんなにお給料もらってないじゃん、いきなりそんな出して大丈夫なの?」「うるさい!貯金ぐらいしてるわ」「もうまた、肝心なところじゃないとこに向かって怒ってるし」「別に、そらしてるわけじゃないし、それにこれ、貢いでるんじゃないんだからね」「分かってるよ!そんな失礼なこと、イオさんに思わないよ。そんなこと思うような人間だと、僕のこと思ってるの?」「違うけど。念のため」「こんなおっきな花束、自分だけの移動なら電車乗ってきたんじゃないの?」「そうだけど」ヨルは、イオの返事を聞いて呆れたように、あらぬ方向を向いてため息をつきました。 (分かってる人には、ほとんど抗議活動じゃん) ヨルは、電車の中で、不機嫌な顔で大きな大きな花束を持って立っているイオの姿を思い浮かべたのですが、年配のサラリーマンに「邪魔だ」と文句を言われて、苦笑いで首をすくめて謝っているシーンがそれに続いてしまい、突然、ものすごく可笑しくなって、それをこらえるかのようにくつくつ笑って、イオから丁寧に花束を受け取りました。 「ありがとう、いろいろ、ほんとに。怒ってくれたことも」「いいえ」「まだ当分怒る?」「まさか。今日は大金はたいたんで興奮してるだけ」「はいはい」「じゃあね、一日お疲れさま」「うん。イオさんもね」 まさにおそらく、怒ってるよりも、イオにしては世にも珍しい大金をはたいて興奮していたせいで、電車の最寄りではなく、隣の駅まで、イオは歩いてしまうのでした。 |
ペン:ゲルインキボールペンキャップ式0.5mmブルーブラック/MUJI 無印良品
「僕は、あなたをただ
コレクションの一つに
加えたいだけなのかな」
何年も前の
自分が話しているラジオが
誰かに動画化されたものを
何気なく聴いていた私に
nobodyは
言いました。
ある意味、
図星とも思える
この指摘に、
かつての、
若い頃には
お馴染みだった
恋愛系の痛みを
胸に感じつつ、
私はじっとしていました。
数えきれないほどたくさんの
しかも本業周辺だけじゃなく、
男女問わず
各方面各方面の
魅力的なひとたちに
囲まれてきたんだろうことは
想像に難くないので、
自分がその一つに
加えられるような
存在かどうかはともかく、
ターゲットされたなら
まぁそういうことに
なるんだろうなと、
心の中で、
声にせずに思いました。
この人がnobodyだと
分かる前にも、
何度も
「多分一度したら
気がすんじゃうよ」
と言っていましたっけ。
そう、
まさにそういうこと。
「だからね、
そうなっちゃダメなんだよ?」
nobodyは
そう続けました。
それを聞いて、
若干嬉しく、
不思議にも思ったけれど、
この人にも、
若い頃からの
自分というのか、
かかってるものが
あるんだろうな、
と思いました。
彼が大昔、
私のホームページを
(いろいろな理由で)
読んでいたらしいことは
分かっていましたが、
そのときのような
得体のしれない引力が
もはや自分にあるとは
思えず、
だからこそ、
この人が私を、
改めて周囲の人たちと
比べることで、
それほどの対象じゃ
(いわゆる彼の
コレクションにするような)
ないとあきらめて、
気づいたらいつの間にか
いなくなっている、
その過程をただ、
たどるだけなのかもしれない。
そんな予感が
天使のように
通り過ぎていきました。
というのも、
2000年のあのときは、
私はいわゆる
精神病の急性期で
本当に追い詰められて
いましたから、
最大に魅力的にならないと
つまり、生きる価値のある
(それは主に
自分自身の
ジャッジにおいて)
存在にならないと、
精神的に
死ぬからです。
こういうときに
テレビの中の人、
つまりほぼ間違いなく
生きていていいと
社会に認定されているような
魅力的な人と、
知り合いでもないのに
愛し愛される妄想、
いわゆる恋愛妄想を
展開してしまう
理由の一つは、
これだろうと思います。
私があのとき、
nobodyのことを
この人だと
認識しなかったのは、
いま
再会できていることよりも
奇跡だったのかもしれません。
nobodyのことは、
今どきの言葉で言うなら、
エネルギーでしか、
それこそ
テレパシーでもなく、
まるでとても
小さかった頃に
何かに呼ばれて
どこまでも
歩いていって
しまっていたときの
(ちなみに
ちゃんと問題なく
帰ってきていました)
あの感じのような、
そういう存在で、
ものすごく、
ものすごく、
好きな人だったのに。
それと同時に、
そのホームページを
自分以外の誰かが
読んでいると
全く考えていなかったことは、
ある意味、
誰の何の意見ももう
聞かない、
それでやらなければ
生き延びられないという、
無意識で無言の
宣言のようなもの
だったのかもしれません。